全身性 貼るタイプの薬とスキンケア

全身性 貼るタイプの薬とスキンケア

ビソノ®テープ、フランドル®テープを使用されている方へ

監修:杏林大学医学部皮膚科学教室 名誉教授 塩原 哲夫

日々のスキンケアで経皮吸収型製剤を正しく使いましょう

経皮吸収型製剤(貼るタイプの薬)を使用することにより、皮膚症状が発生することがあります。
万が一これらの症状が出てしまっても、適切な治療をすることで軽減・消失させることができ、経皮吸収型製剤を使用し続けることが可能になります。
このページで紹介する使い方のポイントをおさえて発症する前に経皮吸収型製剤を貼る部位を十分に保湿しておけば、困った皮膚症状を予防できます。
皮膚のバリア機能を高めるには、“皮膚の保湿”が大切です。水分保有力の高い保湿剤を用いたスキンケアを徹底することで皮膚症状の発生を抑え、経皮吸収型製剤の有効性を最大限に活かしましょう。

ドクターより

Contents

貼って効く薬のしくみ
貼るタイプの薬の特徴
使い方のポイント 貼るとき 貼っているとき 剥がすとき 剥がしたあと
もし、こんな症状が起きてしまったら…
予防のスキンケア 洗浄・清潔 保湿 スキンケア・サイクル

貼って効く薬のしくみ

薬には飲んだり注射をするのと同様、皮膚に貼ることで効果を発揮する経皮吸収型製剤があります。貼るタイプの薬(経皮吸収型製剤)には、主に貼った部位を治療するタイプと、薬物が貼った部位から吸収され全身を巡り治療するタイプがあります。
全身を巡るタイプの薬物は、皮膚に貼ったところから、表皮の間や毛穴や汗腺などを通って皮膚に入り毛細血管から取り込まれ、全身を循環しながら患部に働きかけます。
この薬を正しく安全に使用するためには、皮膚の状態を健やかに保つスキンケアが大切です。

貼るタイプの薬の吸収のされ方(一般に経皮吸収型製剤と呼ばれるのは、貼るタイプの薬のうち、“貼った部位を治療する薬”より、“ 全身を巡り治療する薬”を指す場合が多い。)

貼るタイプの薬の吸収のされ方

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貼るタイプの薬の特徴

貼った部位の皮膚から薬物が取り込まれる。

使用直後における肝臓や小腸での分解や代謝を避けることができる。

血中の薬物濃度は、貼ってからゆっくり上昇し、かつ長時間一定濃度を保つので効果が持続する。

貼っているのを見て判断できるので、薬の服用し忘れを防止でき、第三者でも使用しているか判別できる。

薬を飲み込みにくい患者さんでも使用しやすい。

貼った部位の皮膚に赤みやかぶれなどの症状が出ることがある。

貼るタイプの薬の特徴
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使い方のポイント

貼るとき

薬を貼る部分は清潔に

汚れや異物があると、薬の成分の浸透を妨げたり、皮膚がかぶれたりする原因になります。

汗などで濡れていると剥がれやすくなります。清潔なタオルでやさしく拭いてください。


薬を貼る場合は、毎回貼る部位を変える

同じ部位に貼り続けると、角質などが剥がれてかぶれなどが起こりやすくなります。

貼る部位を毎回変える
薬は皮膚に密着させる

薬は皮膚に密着させる

皮膚に貼ったら、手のひらで薬の上からギュギュっと肌になじむようにしっかり押さえましょう。


接着面にはなるべく触れないように注意しましょう。

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貼っているとき

赤みが出る場合も

薬を貼っていると、貼っている部位やその周りの皮膚に赤みが出ることがあります。これは、主に、皮膚への刺激による皮膚の毛細血管が拡張することで起こる作用です。

かゆみが強く出たり、薬を貼っている部位の周りに発疹ができるなど異常が見られた場合は、すぐに医師に相談してください。
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剥がすとき

剥がすときは、端をめくり、皮膚が伸びないようにやさしく、ゆっくりと剥がしてください。

剥離角度を大きくして、皮膚部分を押さえながらゆっくりと剥がしてください。

剥がしている最中、痛みがひどくなったりしたら無理に剥がさず、温めたり、湿らせたりして発汗をうながすと剥がしやすくなります。

入浴時やシャワー使用時は剥がしやすくなります。

無理に剥がされた皮膚の角質は修復までに1ヵ月かかると言われています。皮膚に負担がかからないよう、やさしくはがしてください。
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剥がしたあと

貼るタイプの薬(経皮吸収型製剤)を剥がしたあと、粘着剤などが皮膚や衣類に残らないようきれいに取り除きましょう。

皮膚に粘着剤などが残っている場合

ベビーオイルやオリーブオイル、消毒用アルコールを使うと容易に取り除くことができます。しかし、あまり強くこすりすぎることは良くありません。

※粘着剤を分解する働きがあります。

※アルコールに過敏な方は、皮膚を刺激することでかぶれ等が起こることがありますので使用しないでください。

皮膚に粘着剤などが残っている場合
衣類に付いてしまったら、残留物を衣類に押し付けないようにガムテープや脱脂綿等で取り除いてください。衣類の繊維に絡みついている場合、残留物がある部分の下にタオルを敷き、残留物の上からベビーオイルなどを歯ブラシや綿棒に付けて軽く叩き、浮いた残留物を不要なタオルに付着させて取り除きます。水ですすいだ後は、衣類に適した洗濯方法で洗ってください。また、ドライクリーニングが有効です。
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もし、こんな症状が起きてしまったら・・・

貼るタイプの薬(経皮吸収型製剤)は皮膚を覆うため、接触した部分に以下のような症状を起こす場合があります。これらは、貼るタイプの薬を“外からの刺激”として感知し、体内に伝達されることで引き起こされる場合がほとんどです。

赤み、丘疹(ブツブツ)、水疱(水ぶくれ)、かゆみ、ヒリヒリ・痛みなど、気になる症状が出てきたら、できるだけ早く医師や薬剤師に相談してください。
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予防のスキンケア

貼るタイプの薬(経皮吸収型製剤)により起こる可能性のある赤みやかゆみなどの皮膚症状は、日常のスキンケアで予防することができます。そのためのスキンケアは、具体的にはどうしたら良いのでしょうか。


洗浄・清潔

皮膚を傷つけないようにやさしく洗いましょう。洗浄のために使った石けんの泡もしっかり洗い流します。なお、洗いすぎには気をつけましょう。

石けんはよく泡立ててから体を洗い、十分に洗い流します。皮膚をこすりすぎないように注意!
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保湿

皮膚が乾燥した状態はアレルゲンや細菌が入り込みやすく、赤みなどの皮膚症状を引き起こす可能性が高くなります。乾燥した皮膚は、貼るタイプの薬(経皮吸収型製剤)に対して、かぶれやすくなります。皮膚を乾燥から守るため、保湿剤を用いて皮膚を保護しましょう。


保湿剤使用のポイント

入浴後か、入浴していない場合は濡れたタオルで皮膚をやさしく湿らせたあとに保湿剤をぬる(水分を閉じ込める)。この場合、決してこすらず、やさしく伸ばすようにぬる。

皮膚の清拭
保湿剤の塗布

1日に2回保湿剤をぬることで保湿効果を高める。(貼るタイプの薬使用中は、貼る領域全体に保湿剤をぬる)

保湿効果のある保湿剤には様々な種類があります。ぬる部位や年齢などによって使い分けが必要なこともありますので、医師や薬剤師に相談し、適切な保湿剤を使用してください。

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スキンケア・サイクル

貼るタイプの薬(経皮吸収型製剤)を使用中は日常のスキンケアで皮膚を保湿された状態に保ち、皮膚のバリア機能を高めましょう。

スキンケアサイクル Step1:古い薬を剥がす(やさしく・ゆっくり)、Step2:前回と違う部位に薬を貼る(しっかり密着させる)、Step3:薬を貼る領域全体に保湿剤をぬる(やさしく伸ばす)、2回目の保湿剤を使用する。

薬の使用や皮膚症状については自己判断をせず、医師や薬剤師の指示に従い、正しく対処してください。